自分の体を大切にしていいという話
これは情報系を勉強する女子大生 Advent Calendar 2017 - Qiita6日目の記事です。
最近、思うことがある。
もしかして、私たち全員性犯罪被害者なんじゃないか、と。
いや、全員というのは流石に大げさかもしれないが。
以前にも書いた通り、私は痴漢被害者ではあるわけだけど、そういうことではない。
ざっくり言うなら、当たり前だと思ってきたあれこれの中に、性的暴力だったものってたくさんあるんじゃないか、という話。
小川たまかさんというジャーナリストを、大分まえにフォローした。
一番最初に読んだ記事は、性犯罪とは関係のない話だった。
小川さんは、性犯罪被害者を取材し、それを記事にすることを一番メインのお仕事にしているジャーナリストの方で、その後私は小川たまかさんの性犯罪関連のお仕事もいろいろ読み、そこから、性犯罪被害者について、いろいろ調べた。
そして、性犯罪被害者によく見られるいくつかの心理が、まったく他人事ではない、と、こう思っている人、いくらでもいるんじゃないか、と思いはじめた。
例えば、小川さんの書いた伊藤詩織さんの紹介の中の
『Black Box』彼女の元に問題が集約された【小川たまか】 | DRESS [ドレス]
性犯罪の被害者が「あなたが黙っていれば終わること」「騒ぎ立てればあなたがもっと傷つくことになる」と言われ、沈黙を余儀なくされることは多い。
これ、「騒ぐとかえってあなたの立場が悪くなる」というのは、言われたことがあるし、これは別の人の記事だが、
彼が私の嫌がることをし続けるので、私は「それは困る」と言い続けた。
「そんなことをされるといやな気持ちになる」と私は彼に言った。
最後にもう一度、「本当にイヤなの」と言って、私は抵抗を示した。
でも、彼は行為を続け、強要を続けた。彼は欲望の塊と化していた。
この心情も、いろんな場面で何度も遭遇してきたもので、今でも嫌悪感でいっぱいになる。
読むのが辛い。
この後、「彼は悪い人ではないから、ちゃんと断らなかった自分が悪かったのだろうか。いや、断ったはずだ、伝え方が下手だったんだ。いつも自分はこうだ、他人にやめてほしいと伝えることができない。自分に弱さがあるからだ」と自己嫌悪するところまでセットだ。
一回や二回じゃない。
レイプとかってほど派手な話でもなかった、太ももを触るとか、手を取るとか、その程度の話だったから、そのときは、性暴力だとは思ってなかったけど。
友達でも、当時の恋人でも、そんなことはあった。
私だけが特殊な環境に置かれてるとは思えない。
誰でも多かれ少なかれ男の人に恐怖を覚え、意思を踏みにじられた経験があるんじゃないだろうか。
この誰でも、というのは、女なら誰しも、という範囲の話じゃない。
二件目の方はトランスジェンダーだし、私の友達には痴漢被害にあった男性も多い。
可視化されていないだけで、実は日本は、性犯罪があふれかえりすぎているんじゃないのか。
それこそ、当たり前すぎて、性犯罪だと誰も思わないほどに。
日本は治安がいい、というのは、搾取する側にとって治安がいい、というだけで、半分以上の人間にとっては実は全然治安よくないんじゃないのか。
実際、日本の法律が「性犯罪」と認めるハードルは高く、他の国では性犯罪になっているものがなっていない場合がたくさんあるらしい。
このニュースは今まで強制わいせつ罪には加害者の性的意図が必要とされていたが、性的意図がなくとも強制わいせつ罪として認めるような判例に変更されたという話で、変更の理由は
「性犯罪に対する社会の受け止め方の変化を反映したものだ」
だそう。
逆に言えば、今までは、「誰がお前なんかに興奮するかよ、勘違い女」と言い張ってそれが認められれば強制わいせつ罪ではなかったのだ。
日本は性犯罪が少ない。
なぜなら女性が男性に搾取されるのは当たり前のことで、性犯罪ではないから。
と、そういう理屈に聞こえる。
漫画やアニメで、スケベなキャラクター(男性の場合も女性の場合もある)が女性キャラのおっぱいを触ろうとしたり、嘗め回すように見て、当人や別の女性キャラに怒られるシーンがギャグとして描かれることがよくあるが、私にはあれは笑えない。
ああいうとき、怒るのは、なぜ女性キャラばかりなのか、なぜ男性キャラは怒らないのか。
男でも女でも等しくああいうシーンには怒るべきじゃないのか。
「女が被害を受けるのは女自身が身を守るべき問題で、搾取する人間は思うがままに欲望を追求すればいい」という風に見えてしまう。
実のところ、性犯罪を取り扱った記事を読んでいると、被害者に理解のある内容のものでも、著者が男性だってことは結構ある。
ジャーナリストに限らず一般の男性の間でも、性暴力を見たら止めるのが普通になってほしい。
性暴力を止める男性のイメージ
(コードギアスのミレイ会長に性暴力加害者役をやってもらいました。会長ありがとう)
私が中学生、高校生の頃は、「女子ツイッタラーのツイートのイライラ度から生理周期を解析して管理してる」なんてツイートが、笑い話として受け入れられていた。
今じゃそんなこと言ったら流石に炎上すると思うが、当時の私はあれを見て、「生理がバレるような素振りを見せたら、それを記録につけられて記録を送り付けられたりしても、文句言えないんだ」と思った。
生理周期の記録をつけていたら、流石に犯罪じゃないのか。
犯罪になるべきだ。
笑っている場合じゃない。
探せばいくらでも、日常の中の暴力性が見つかる。
先述の小川さんの記事に、こういう言い回しがある。
しかし、今回の詩織さんのような件があったときに、社会を変えようとする人を半笑いでたしなめたり、苦難を抱える人に我慢を強いて終わりにしたりする行為は、一体誰にとって都合がよいのだろう。
「一体誰にとって都合がよいのだろう」という言葉は、小川さんはよく使うけれど、この視点は本当に大事だ。
「面倒くさい世の中になった」「被害妄想なんじゃないか」と被害者の声を軽視して得をするのは犯罪者だけだ。
この社会は、あまりに弱者を踏みにじる男性に都合よく出来すぎていやしまいか。
日本は今や世界男女平等ランキングで140カ国中114位の、男女平等後進国だ。
男女は既に平等だと思っている人もいるかもしれないが、世界経済フォーラム(以後OECD)によれば、そういうことになっているし、私もそう思う。
(The Global Gender Gap Report : http://www3.weforum.org/docs/WEF_GGGR_2017.pdf )
先進国の中で低い、どころか、発展途上国を含めて考えてなおかなり低い方に入る結果だ。
特に、専門性の高い職種の男女比がランキングを下げている。
労働賃金、政治家・経営管理職、教授・専門職、高等教育(大学・大学院)、国会議員数では、男女間に差が大きいとの評価で世界ランクがいずれも100位以下。その中でも、最も低いのが国会議員数で世界129位
(【国際】世界「男女平等ランキング2017」、日本は114位で昨年より3位後退。北欧諸国が上位 | Sustainable Japan)
フランスでは女性の裁判官が多く、判決が女性に有利になっているらしい。
さらにフランスでは裁判官が女性の方が多く(裁判官養成学校修習生の7〜8割が女性)で、ジェンダーバイアスが逆方向(男性に不利)に働いている可能性さえあるそう。
— 小川たまか🦎まとめないでね (@ogawatam) 2017年11月22日
性犯罪に関する日本の司法が男性贔屓すぎる点の理由のひとつは、こういった政治家や裁判官に女性が少ないという点も大きいのだろう。
企業の経営陣にしても同様だ。
私たち、情報を学ぶ女子大生は、もし卒業後IT業界やアカデミアに就職するとしたら、こういった環境の中で働くことになるのだ。
性犯罪の多くは、知り合いからの被害である場合が多い。
上司と部下、先生と生徒などという上下関係がある場で特に起こりやすい。
就職したら上司にレイプされました、は全然他人事ではないのだ。
IT会社に見学に行くと、どこも口をそろえて「うちは女性も働きやすい企業です」なんて言うけど、果たしてどこまでほんとなのか。
いじめが起きた小学校への罰則を強化したら、小学校がいじめを隠蔽するようになったため見かけ上件数が減った、という話があるが、日本の性犯罪も今はそのレベルだ。
性犯罪の件数が多いコミュニティは、摘発されているだけマシ。
表立って起こっている事件が少ないところこそヤバイ。
もしそれを知っているなら「うちは女性も働きやすい企業です」と断言はできないだろう。
「女性にとって働きやすい環境であるよう努力している」「女性社員の声も取り入れられるよう、決定に参加してもらうなどの努力をしている」というような表現になるはずだ。
安易に「女性も働きやすい」と断言してしまっている時点で、理解のある環境だとは私には思えない。
ほんとは、この記事は最初はキャリアについて書くつもりだった。
職場での差別、偏見、セクハラは、どんな企業に行くとしたって他人事ではないだろうと、被害を受けたときに自分の心を守れるように、味方してくれる人がこれだけいると紹介するような内容を書こうと思っていた。
でも、どうしてもうまく話がまとまらなくて、結局私が書きたかった「差別、偏見、セクハラ」って、性暴力って書いた方が適切だったってことに気が付いた。
職場等で起こっているような「セクハラ」と性犯罪の根底にあるものは共通、法律で犯罪と認められているかどうかが異なるだけで、加害者の心理も、被害者の心理もそこで起きているものは本質的に変わりないように思う。
マズローの五段階欲求説で言うところの、社会的欲求云々言う前に、まず、安全欲求が満たされていない。
その状況でキャリアについて語っても虚飾にすぎない。
人間は生物だから、本能があり、欲求がある。
でも、人間は、生物である以上に人間であり、理性と科学で欲求を制御し、問題を解決できる種族のはずだ。
実際、時代は変わりつつある。
イオンはエロ本の取り扱いをやめたし、強制わいせつ罪の判例も変わった。
これからはたとえ「誰がお前なんかに興奮するかよ」が真実だったとしても、そこに客観的事実としての性的な行為の強要さえあれば、法律は被害者側を守ってくれる。
まだまだ法律に問題のある点も多いらしいが、私たちが中学生、高校生だったころに学んだ「男女のあり方」はこの数年で変わろうとしている。
自分の体は自分のもの。
誰にも勝手をすることは許されないし、もしそうされたのなら、傷つき、怒っていい。
怒ったところで受け止めてもらえるのかという点については前途多難ではあるが、少なくともこうして怒ることができるようにはなった。
最後に、エンパワメントというらしいが、読んでいて勇気づけられるような、受け入れてもらえると希望を持てるような情報をいろいろ紹介しようと思う。
今回は、キャリア、ITに関わりそうなものをちょっと多めに集めてみた。
小川たまかさんの記事
性暴力について取材して記事を書いているジャーナリスト。
小川たまかさんの記事はなにを読んでもはっとさせられるものばかりだけど、そのなかのいくつかを紹介します。
メインは性犯罪だけど、キャリア関連の話題も。
news.yahoo.co.jp
小川たまかさんのメインのお仕事である性犯罪関連の話
No means No 私の体は私のもの|Tamaka Ogawa|note
「性犯罪者は“マジック”で自己正当化する」 加害者臨床から見た“男が痴漢になる理由”(小川たまか) - 個人 - Yahoo!ニュース
Black box
ジャーナリスト伊藤詩織さんが書いた、ジャーナリスト山口敬之にレイプされた事件の顛末をまとめた手記。
滅多に表にされない職の場面で起こる性犯罪の実情。
「私が声を上げたのは、彼と闘うためではなく、沈黙したら、同じような被害者がまた出てしまう。性暴力をオープンに話せる社会にし、司法や捜査システムを改善したいため」(『AERA』2017年11月13 日号) http://wezz-y.com/archives/50723 より
彼女が顔を出して語ったもう一つの意味(小川たまか) - 個人 - Yahoo!ニュース
『Black Box』彼女の元に問題が集約された【小川たまか】 | DRESS [ドレス]
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