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一般女子中学生が電車で精液をかけられる国

痴漢が話題なので、twitterで痴漢された人がどのぐらいいるのかのアンケートを取ってみた。
結果は以下の通りだ。


票数にすると、こうなる。

電車通学

性別 男性 女性
あり 6 8
なし 16 4
合計 22 12

電車通学でない

性別 男性 女性
あり 2 5
なし 9 2
合計 11 7

全体

性別 男性 女性
あり 8 13
なし 25 6
合計 33 19


私は別に、痴漢をされているのが普通でされてないのがおかしいだとか、男で痴漢されるなんておかしいだとか言いたいわけではない。
どういう経験をしてきたかはひとそれぞれ千差万別いろいろあるものだ。
先日、この痴漢体験告白記事を読んだ。
非常に濃密な話なのでぜひ読んでほしい。

note.mu

このおがたまさんのように、性器に指を入れられるところまでいった人もいれば、私のように服の上から触られるだけだった人もいるし、全く縁がなかったって人もいるだろう。
それらはどれも嘘ではない。
変な言葉遣いだか、痴漢のされ具合にも、それを痴漢と受け止めるかどうかにも多様性があり、どれもおかしいものではないのだ。
だから、他人の痴漢され歴におかしい、それは嘘だ、なんて言わないでほしいし、あなたがおかしいと言われたとしても、言った人がおかしいのであって自分が悪いと思う必要はない。
それから、痴漢のニュースがあるたびに冤罪だと決めつけてかかり、「疑われた男がかわいそう」「この女はなにがしたいんだ」という発言をする人たちは、あなたのその発言を聞いている人のうち、女性なら3人に2人が、男性なら4人に1人が痴漢された経験があるということを考えてほしい。
もちろん所詮は嘘つき放題のtwitterのアンケートだし、どこから痴漢と呼ぶのかも特に指定せず各々の基準で入れてもらっただけなので、統計的価値などは微塵もない。
それでも、名前を出して告白できなくても、匿名ならこれだけの人が痴漢にあったと思っているということ、痴漢被害者は一部にしかいない例外的なケースなどではなく、どこにいてもおかしくない、ということはわかるだろう。
痴漢被害者を責める言葉を眉をひそめてみている人は、口に出さないから目立たないだけで、案外多いのかもしれないのだ。

これだけで終わってもつまらないので、私の痴漢経験も話そうと思う。
私が今回書く二件はどちらも中学生のときの話だ。
周りの痴漢被害の話を聞いていても中学生の頃のことが圧倒的に多いので、やはり中学生が狙われやすいのだと思う。

こういう話をすると必ず容姿の話題が出る。
当時の私は自分の見た目をキモくて撮ったらカメラが腐ると思っていた、卑屈ネクラ女だった。
眼鏡と伸ばしっぱなしの髪と、校則を守った芋臭い膝下のスカートと今時だれも履いてないような白ソックス。
あまり見た目に頓着していなかったが、制服が古典的なセーラー服だったこともあって、もしかしたら時代錯誤にも見えていたかもしれない。
3人に2人が痴漢された経験があるということからもわかるように、容姿なんて関係なく、誰でも被害者になりうるものだ。
誘うような格好をしているとか、美人だとか、おとなしそうだとか、そんな理由で痴漢されるされないが決まったりはしないと思っている。
私の容姿については、そういう風に「容姿に関係なく誰でも被害に合うのだ」と受け止めてもらえたら嬉しい。

中学受験をした私は中学から電車通学で、埼京線丸ノ内線を利用して通学していた。
服の上から触られる、というか、「たまたま当たっているだけかな?鞄かな?」「動いたけど、電車で揺れただけかな?」という、グレーゾーンは日常的にあった。
今思うと、男性はそういうことは日常的にはないらしいし、この年(23)になると満員電車にのってもそんなことは滅多にないので、やっぱりあれはわざとなんじゃないのか、と個人的には恨みたくなる。
少なくとも、意識すれば満員電車でも他人の尻と胸に手があたらないように避けることはできるってことじゃないのか。
ああ、法律的には痴漢は性器に直接触れなければ痴漢ではないらしいので、男性読者のみなさんは「たまたま服の上からあたっただけで痴漢扱いされるのか!」とか慌てないでほしい。
(追記)服の上から触れただけの場合、条例違反扱いになることが多いらしいです。

閑話休題。私はお母さんから「電車が揺れてないときも手が動いてたら痴漢」と教わっていたので、手が動いたら態勢を変えたり、それでもしつこく触ってくる場合は次の駅で車両を変えたりしていたので、ほとんどの場合はそれ以上のことをされることはなかったのだけれど、二回だけ今でも鮮明に覚えている痴漢があった。

ひとつめは、ぎゅうぎゅう詰めというほどの満員電車ではない、揺れると時折隣の人と肩が当たる程度の混み具合だったとき。
私が乗ってからずっとお尻になにかが当たっていたのだが、何駅かずっと、まったく動く素振りがなかったので、「動いたら痴漢」と母に言われた基準を守っていた私は、この人はわざとやっているのではないのだから痴漢あつかいしたら失礼だと思い、素知らぬ顔でそのままにしていた。
そしたら、私が降りる駅になって、降りようとした瞬間、その人がむんずと尻を掴んで揉みしだいてきたのだ。
今思い出しても腹が立つ。
私が黙って見逃していた間、ずっとニヤニヤして感触を楽しんでいたのだろうか。
そして急に揉まれたことに驚きながら、とっさになにも対処できずに人ごみに流され降りていく私をみて、心の中でほくそ笑んだのだろうか。
どう考えても相手を一人の人間として尊重した態度ではない。
私のことを、ものか、動物か、いずれにせよ一方的に性欲のはけ口にしていい、自分より下等なものとして扱ったのだ。
本当に許し難い。

もうひとつは、電車から降りた後気が付いた。
自分の足になにか濡れたものがあたって、雨でもないのに、水筒でもこぼしてしまったのだろうかと慌ててぬぐったら、手に、でんぷんのりを水で溶いたようなどろっと白濁した液体がついていた。
精液を見たことはなかったけれど、「白くてどろっとしたものだ」ということは知っていたので、まさかと思って、慌てて確認すると、それはスカートの裾について、そこから垂れてきたものだとわかった。
鑑定したわけではないのであれが精液だった証拠はないが、未だに、いや、今だからこそ、あれは精液だったのだろうなあ、と思っている。
だって、でんぷんのりを水で溶いたものを持ち運んで、それを電車の中でこぼしてたまたま女子中学生のスカートにかかるって、そんなのあまりに出来すぎだ。
だって通勤ラッシュの電車なんておっさんの方がよっぽど多いのだ。
でんぷんのりをかけられた女子中学生が1人いたら、でんぷんのりをかけられたおじさんが20人ぐらいいないとおかしい。
痴漢にかけられた、と思った方がよっぽど説得力がある。
こいつも、何も気が付かずに降りていく私を見て、そのあと気が付いて慌てふためく私を想像して、愉しんでいたのだろうか。
何度も言うが、私は痴漢を愉しませるためのおもちゃではなく、一人の人間だ。
馬鹿にするのも大概にしてほしいが、現状実際馬鹿にされたまま泣き寝入りするしかないのも事実だ。

このタイプの精液を残す痴漢はあまりに社会をなめている。
だって、遺伝子鑑定にかけられてしまったら特定されてしまうだろう。
この痴漢は、私の学校の先生も、親も、それを採取して警察に突き出すと、警察がそれを鑑定して自分を捕えに来ると、微塵も思っていないからこんなことをしたのだ。
痴漢は、社会が痴漢の味方をし、痴漢被害者に泣き寝入りするよう要求するとわかっていて、痴漢をやっている。

思い返してみると、私はお母さんの「手が動いたら痴漢だ」という言葉に随分救われてきたように思う。
あそこで、「あなたみたいな魅力のない学生が痴漢なんてされるわけない、全部思い上がりよ」と言われていたら、きっと今よりずっと深刻な被害にあっていた。
なんなら、自分が今子供に教えるなら、動いたら、と言わず、当たっている時点でグレーだから逃げなさい、と教えたい。
中学生はまだ、自分が性的な対象としてみられるということがよくわかってないかもしれない。
中学生にとっては、痴漢されようがされなかろうが、友だちとの話題のネタになるだけで、大して重大なことではないかもしれない。
少なくとも私はそうだった。
それでも、中学生の時点から守っておくことが、将来物事がわかるようになったときに、その人の尊厳を守ることにつながる。

おがたまさんも書いているが、まだ社会のことを知らない中学生がはじめて遭遇する、先生やお父さんではない知らない大人の男が痴漢なのだ。
「男は狼」なんて言葉もあるが、狼なんてかわいいものではない。
言葉が通じず、一方的に暴力を振りかざしてくるエイリアンってところだ。
テラフォーマーズのゴキブリ、あるいはエヴァンゲリオン使徒、あるいはfgoのラフムだ。

はじめて出会う「知らない男性」がそうだったから、私は、世の男性全てを「上っ面では紳士的に接してくれるが本性は痴漢と同じ」と思っていた。
そこらでまるで人間みたいな顔してる男達のあいつもこいつも、痴漢加害者か、痴漢予備軍だと思っていた。
今思うと笑っちゃうけど、でも本当にそう思っていたのだ。
だってたまたま電車に一緒に乗りいれた周りに立ってる何人かの男のうち、数日に一度のペースで痴漢がいる。
男は、自分の意思を無視して好き勝手に性的に消費してくるのが当たり前なのだと思っていた。

今の彼氏と付き合ってようやく、そうではなくて、話が通じる人間と呼べる男性もいるのだとようやくわかったけど、それまで男性性を本当に嫌悪していたし、緩和されたとはいえ未だにその傾向はある。
それが生まれ持ってのセクシャリティなのか、痴漢以外の経験から来るものなのか、痴漢から来るものなのかはわからないが、多分全てだと思うし、痴漢から来る部分も小さくないと思う。
あれだけ痴漢に頻繁に遭遇していたのは、痴漢が多かったからではなくて、痴漢が狙って中学生女子の傍に来るからだったのだろうと、今なら思える。
スカートの中に手を入れられたことのない私でこれなのだ。
性器に触られるレベルの痴漢にあった人たちはもっと大きな傷を負うだろう。
中学生が痴漢されるという経験は、一生に影響を与え、男性と適切に性的な関係を結ぶとき、障壁になり続ける。

痴漢程度、なんて軽視していい問題ではない。
冤罪で無罪の人間が罰せられるのは司法の失敗で、被害者が悪いわけではない。
セカンドレイプという言葉が注目されはじめてきたことは嬉しいし、だからこそ私もこうして言えるようになったわけだけど、未だに理解を示してくれない人は多い。
社会が痴漢に対して寛大な姿勢を示すから、痴漢が生まれるのだ。
社会の理解があれば、痴漢はなくせると私は思う。
どうか、これ以上次の世代の子供たちが、痴漢で自尊心を傷つけられることがありませんように。

2017/12/06 追記
この記事が地味に閲覧されているらしい。
私は専門家ではないけど、でも社会を構成する成人した大人の一員として、もし未成年が痴漢の被害に会って悩んでいるのなら、力になるべきだと思う。
ほんとは匿名で連絡できる手段があるといいんだろうけど、今のところうまい方法が思いつかないので、とりあえずTwitterでDMできるようにはしてある。
七星慧斗 (@kate_ccs) | Twitter
うまく説明するのは難しいことはわかってるから、最低限、ここを見て連絡したんだとわかるように書いてくれれば私の精一杯の誠意で対応します。

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