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就活が苦手な人でもできる就活

私の周りには「就活とかムリ。だけど起業ってほどリスキーなことする覚悟もない」という人が結構いる。
彼らの言い分は、「自分は就職とか柄じゃない」「仕事のために生きるとか無理」「働きたくない」といった調子。
まず最初に、誤解しないでほしいのが、別に私は彼らを怠け者だと思っているわけではない。
むしろそれは怠けるとかではなくて単純に「就活が苦手」と、誰にでもある得意不得意のうちのひとつとして数えられるのが適切ではないだろうか。

就活というものは、経団連が定めたスケジュールを基準に、就活準備から内定までのスケジュールのモデルが存在して、そのみんなと同じスケジュールに従って、準備し、みんなと同じスーツを着て、少しの隙もなく模範解答の応対をする。
就活が苦手な人たちが苦手な「就活」というのは多分、こういう、みんなから、社会の規範から一歩外れたら出遅れて想像もつかない見るも無残な目にあわされるような、恐ろしいものなのだろう。
実際そういうハードな就活をしている人たちというのは結構みかける。
企業が判断する側、自分が判断される側、の構図に完全にはまりきって、自分より圧倒的に偉い企業の機嫌を取るために、様々なうわさに翻弄される。
企業側も「私らはこういう基準で学生を見ています。やっぱりこういう人はいいですよね」といった調子で、自分が判断する側で立場が強い側だという自覚を持った振る舞いをしてくるのだからたちが悪い。

あれはあれで、ガイドラインがないと困るって人たちにとっては助かるものなんだろう。
とりあえずみんなについていけてさえいればなんとかなる。
自分で判断する必要がない。
そういうことを魅力だと、楽だと感じる人たちというのはいて、そういう人たちが迷える子羊にならないようにあのシステムがあるのだと思う。

就活は本来もっと自由度が高く、幅の広い概念であるはずだ。
要は企業と出会いさえすればいいのだ。
型にはまった就活は単なる集団お見合いだ。
別にお見合いをせずとも自由恋愛で自分のパートナーを見つければそれでいい。
ただ、お見合い以外にどうやってパートナーを見つけたらいいのかがわからないから、就活が苦手な人たちは困っているんだと思う。
「セロリが苦手な人でも食べやすいセロリ料理」はググれば出てくるが「普通の就活が苦手な人でもしやすい就活」の情報はググってもそうは出てこない。
就活に苦手意識を持って目を背け、情報の収集を怠っていたらなおさら届かない。

お見合いを介さずに企業と出会うことは、一般には「コネを作る」と呼ばれている。
コネクション。

コネを作るなんてずるい、とかいう人もいるけど、コネの威力というのは馬鹿にしてはいけない。
直接結果に見えやすく繋がるわけではないから、「ホンネとタテマエ」の使い分けが苦手なASDや将来の見通しを立てるのが苦手なADHDほど軽視してしまいがちだけど、コネは気づかないところで少しずつ効いてくる。
お得な話を手に入れたときに教えてもらえたり、コネが次のコネを呼んだりして、二乗三乗に効いてくる。
自分独自の情報網ネットワークという資産になる。

というかそもそも就活というのが、人材と企業がコネクションを作るためのイベントなのに、なぜ就活で作ったコネクションはコネと呼ばれないのかよくわからない。
いや、実際あれを広い意味でコネと呼んでも差支えない気がする。

既にコネがあるならそれを使わない手はない。
よっぽど「これは自分の希望とは違うな」という確信がある企業とかでなければ、片っ端から知り合いに「会社見学させてもらうことってできますか?」と言ってみよう。
知り合いというのは、趣味で知り合った人、twitterで知り合った人、サークルのOB、親の友達などなどだ。

あとはコネを増やす方法だけど、露骨なお膳立てとかは別にしなくていい。
コネを増やすために心がけるべきことはみっつだと思っている。

  • 人を紹介しようか、と言われたら、単位や病気にかかわらない限り他のなによりも優先して行く
  • 人と知り合う機会のあるイベントに誘われたら、友達との約束よりも優先して行く
  • 自分が今のところどんな仕事ができそうだと考えているのかを言語化しておいて、機会があるたびに伝える

誘われなかったら行かないイベントでも、誘われたら行っておくというのは大事だ。
その人が別の情報を手に入れたときにまた誘ってくれる。
紹介してもらえる相手がどんな相手かわからなくても、イベントがどんなイベントかよくわからなくても、よほどこの手のイベントは自分には無理だ、とか、これカルト団体じゃないの?事件に巻き込まれない?とかの予感がしない限り、とりあえずわんこのように「行きます!」といいお返事をしておくといい。
出会いは基本数撃ちゃ当たる戦法、行ってみて特に収穫がなかったとしても、何回か行ってそのうち一回収穫があればいい。
収穫がないことはプラスではないとしても、特にマイナスでもない。
よほど苦痛そうなイベントでない限り、「あなたがオススメしてくれたのなら行きましょう」という義理を果たすためだけでも行く価値がある。
ちなみに私は奨学金方面からグローバル民族衣装のファッションショーのモデルのお誘いを受けたときは流石に断った。

それから、自分がいま何を考えていて、なにについての情報を集めているのかを、今の自分にわかっている範囲でいいから伝えておくと、相手から誘われるイベントの精度が上がっていく。
これは時間とともに更新されていくものなので、一度伝えたらそれでいいわけではなく、機会があるたびに今最新の自分の考えがどうなっているかを伝えておこう。
逆に言えば一度伝えたらそれを変えられないとかは心配しなくてもいい。
とりあえず、今、社会で働いたこともない社会をよくわかってない自分が等身大に思うこと、で十分だ。
というか就活なんてそれ以外の基準で決めようがない。

企業の個別のイベントについては地道にそうやって情報を集める必要があるけど、比較的多くの企業が提供してくれているイベントに、インターンと各種コンテストがある。
会社説明会やワンデイインターンもある種のコネ作りだとおもうけど、そういうイベントほど「表向きの顔」色が強くなって、こちらも「タテマエ」を用意することが求められる、息苦しい就活っぽくなってくるので就活が苦手な人にはオススメしない。

インターンの場合、できたらワンデイインターンではなく、長いやつ。
できたら、他のインターン生と一緒に受けるやつではなく、インターン一人一人バラバラなチームに配属になるやつ。
そして、できたら通年募集で期間の融通がきくやつ、がいい。
そこで社内の人と知り合って、身内になってしまえば、内々定が出る場合もあるし、そうでなくともその会社とは気楽な距離感になる。

コンテストに関しては、企業も基本的には初心者でも参加人数が多ければ多いほど嬉しいはず。
バリバリの経験者じゃなくても、初心者なりに頑張りました、というのを、「将来有望」「伸びしろがある」とみてくれることも多いだろう。
確かに、ものによっては競技プログラミングのコンテストなんかだと本当にデキるやつを探しているタイプのコンテストもあるだろうけど、そうでないものもある。
内容も企画系のコンテスト、プレゼン系のコンテストなどなどいろいろあるし、女性向けのものもある。
自分の興味の持てるもの、これならできそうって思うものを探して参加してみるといい。
コンテストに目星はつけたけど、どうしても勇気がなくて尻込みをしてしまうようなら、コンテストの問い合わせ先に連絡をして、心配していることをそのまま聞いてしまうのがいい。
大抵の場合は企業側にとっても不要な心配で参加を諦められてしまうのは損失なので、心配を取り除くために丁寧に対応してくれる。