コンパクトでない空間

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「自分には友達がいない」の呪い

友達ってなんだろう、っていう思考実験についてのひとりごと。

「自分、友達いないし」
と言う人は結構いる。私も昔そうだった。
そんなことを言うと決まって、
「私は友達だよ」
なんて言われるんだけど、そう言われてもどうにも友達って気分になれない。
こうなっちゃうと、もう、友達というものの作り方がさっぱりわからなくなる。
友達ってなんだ。話しかければみんな相手してくれる。誘えば遊んでくれる人もいる。でもそれってなんだか、友達って気がしない。
友達って、ぼっちだって笑われないように、毎日お弁当を一緒に食べる保証をし合う取引相手なんだろうか。友達ってもっとあったかくて、救われる存在のはずじゃないんだろうか。
みんな当たり前みたいに友達を作ってる。私だってクラス替えの直後には話しかけてみたり馴染むように努力をしたはずなのに、今は休み時間になるとみんなそれぞれグループを作ってお弁当を食べていて、私は気がつくと一人だ。
話しかけていれてもらうことはできるけど、そんなことをしてもどうでもいい当たり障りのない話をするばかりで全然面白くないし、疲れるし。
どうしてみんな簡単に友達を作ってあんなに楽しそうにしているんだろう。私はどうしてみんなのようにできないんだろう。私には人間として必要ななにかが致命的に欠けてるんじゃないだろうか。私が私である以上一生友達は作れないんじゃないだろうか。
そんなことを言うと今度は、「自分から壁を作ってる」って言われる。私たちは受け入れるつもりなのに、あなたが自分で勝手に壁を作ってるんでしょ。自業自得だよ、って。
壁ってなに?どうやったらなくせるの?
確かにみんなとの間に厚くて高い壁は感じるけど。でもそれは私が好きで作ってるわけじゃない。あなたたちが自分達で勝手に取り決めをして、その取り決めを知らない私との壁を作ってるんじゃないの?
私はこんなにも友達がほしいと思っているのに、壁を作りたいなんて思ってるわけないじゃん。
どうして誰もわかってくれないんだ。
そう思ってた。

今はどうかというと、友達に囲まれて、楽しく日々を送っている。
今なら思う。昔疑問に思った「壁ってなに?」の答え。壁は、文化の違い、価値観の違いだ。どっちかが作ったものではなくて、人と人が違う以上、自然とそこにあるものだ。両側から乗り越える努力をするものだ。
今日、後輩と、「後輩ちゃんは嫌だと思ったら言ってくれるから、言ってくれたものについてはできるだけ気を付けてるんだけどね」「それで十分なんですよ」という会話をした。
他の友達とも、「同じ趣味を共有して遊んでくれる人がいる、それだけで十分ありがたい」という話もした。
多分、この二つの会話に、友達って概念のエッセンスが詰まってる。これは、私が何度も言われて嫌になった言葉だけど、それでもこうして友達ができてみるとこの言葉しか浮かばないから、書くことにする。友達っていうのはなにも難しい概念じゃなくて、きっととてもシンプルなんだ。
一緒にいる。話す。遊ぶ。それで、お互いに、悪くないなって思う。それだけで友達になれるんだ。
もちろん、昔の私はきっとこの説明じゃ納得しない。だって実際話して、遊んでて、相手は友達だと言ってくれてるけど、友達って気がしない、って言うだろう。そんな人にもわかるように丁寧に説明するなら、こうだ。
あれもこれもバレたら嫌われるから隠さなきゃとか、そんな余計なことは気にせず、ただ自分のやりたいようにやって、話す。ただ、なにも気にしないわけじゃなくて、これは嫌だと言われたことだけはやめる。このルールで接していて、自分が嫌だなとも疲れるとも思わなくて、相手も嫌だなと思わなかったら、友達だ。
ま、自分のやりたいようにやるっていうのは結構難しい。自分がなにをやりたいのかって自分のことなのに案外わからないし、プチトラウマみたいなものがあってどうしても怖くてたまらなくてできなかったりもする。自分が嫌だと思っているかどうかに気づくのも苦手な人は苦手だと思う。
自分には友達がいないと思ってしまうと、友達を作るには人一倍努力して周りに合わせなければと思うし、そうなると「自分がやりたいようにやる」からどんどん離れていく。悪循環、「自分には友達がいない」の呪いだ。
友達っていうのは、シンプルって意味では難しくないけど、難しい人にとっては難しいっていうのも、否定していたら前に進めない事実なのかもしれない。

私は、言葉や人の気持ちを大切にする人と話していると楽しい。学問や芸術や文化に興味のある人と話していると楽しい。
ノリや雰囲気に重きをおいた会話や、人を傷つける会話、勉強を軽視するような会話はあんまり楽しくない。
あなたはどんな人が好きで、どんな会話が好きなのだろうか。
もしあなたが友達がいないと感じるなら、友達はいるはずなのに寂しいと、どこか繋がっていない、理解されていないと感じるなら、友達を作るために、幸せを掴むために必要な最初のステップは、自分を知ることかもしれない。