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オタクの留学と某奨学金の愚痴

とあるTからはじまる日本代表プロジェクトの奨学金もらって留学に行った。
この奨学金をもらうとエバンジェリスト活動をしてくれとお願いされる。
留学生を増やしたいという国家プロジェクトの一貫としての奨学金なので、留学がいかに素晴らしいかを宣伝してくれという話だ。
別に義務じゃなくて、やらなくても奨学金はもらえるが、事後研修はサボると金がもらえない。
その二日間かけて行われる事後研修に行くと、三時間ぐらいかけて、自分の今後のエバンジェリスト活動の計画を立てて発表させられるのだ。
講演会を開く、イベントを企画する、などのエバンジェリスト活動の事例の乗った資料を渡され、自分なりのやり方を考えろと言われる。
そしてみんな従順に、母校の高校に説明会を開かせてもらえないかお願いしてみる、とか、自分なりの活動を計画するのだ。

グなんとかバルリーダーがどうのどうのとやかましく言っているが、奨学金という恩義に報いるため、見返りもなくタダ働きをすることに疑問の声を挙げることもなく従順に従うことは、果たして本当にグローなんとかリーダーにふさわしい姿なのか。
私にはどうにも、リーダーというより権力に逆らえずに腹を見せるわんこに見えて仕方がない。

二日間拘束される。
遅刻すればキレて授業放棄した小学校の先生みたいに叱られる。
画一化された自己啓発系ワークシートの空欄に己の分析を書かされ、発表させられ、ダメ出しをされる。
アイスブレイクの挨拶に「日本人って季節に感受性が高くていいね」なんて言い出す講師がいる。
留学で一皮剥けることを「かわいい女の子がこんなに立派になったんですよ」と表現する講師もいる。
これが君たちの語る「なんとかバルリーダー」を育てるための教育か、そうか。
日本の常識を捨てろと、海外にいるつもりで、引っ込み思案にならず大胆になれと口先では言いながら、講師には、さらけ出された個性を受け入れる度量はない。
本音でぶつかれ、という言葉の配慮のなさよ。
いつどんなときでも人間は本音を隠す権利がある。
本音は命令して言わせるものじゃない。

とまあ、さんざん某奨学金をボロクソには言ったが、同意できるところもある。
私も留学する人は増えてほしい。
特に、個人的には、オタクにこそ留学に行ってほしい。
留学は別に優秀な人たちやリア充のためだけのものじゃない。
語学留学や社会科見学的なものから単位取得や研究まで、様々な留学の仕方があり、その中には自分に合ったスタイルはあるだろうと思う。
自分に合った留学がわからないのなら、私も相談に乗るし、世の中にはお金を払うとその人にあった留学を探してくれるサービスもある。

例えば、オタク趣味や発達障害で自分を否定されて育ち、自分を肯定できない人たちに、留学に行ってほしい。
大抵の他の国は日本よりオタクにも発達障害にも優しい。
居心地がいいんじゃないかと思う。
留学に行ったって日本の現実は変わらないが、その日本の現実を見る自分の目が変わる。

それから、社会、政治に期待できない、どこの政党も支持しない、行政も学校も信じない、という人にも、海外に行ってほしい。
日本の行政や学校は特殊だ。
その例だけ見て、世界中どこでも社会や学校というものは常に自分を苦しめると思っているのなら、早計だと、
海外の例を見れば、その国のそれが信用できなかったとしても、少なくとも行政も学校も自分が見てきたものより本来ずっと多様で、一概には語れないということはわかるはずだと思う。

どんな動機であれ留学に興味を持った人が、学力、語学力、金銭を理由に諦めなくて済む社会になってほしいと思う。
学習支援や奨学金で解決できるものが、そのサポートにアクセスできないがゆえに諦めなければならないのは、とても悲しい。
行ってみたいと思った人が、誰でも安心して留学に行ける社会であってほしい。

残念ながらまだそういう社会ではないが、でも私のできる範囲で手伝いたいとは思ってる。
もしこれを読んでいて、学習支援や奨学金で悩んでる人、その他留学に興味はあるけど漠然と不安で踏み切れない人がいたら、一緒に解決法を探してみるので、相談してほしい。
特に奨学金は、日本政府、地方自治体、民間、受け入れ先大学、受け入れ先政府と様々な形式、条件がある上、宣伝する気の足りてない奨学金が多くて、探すのが難しい。
留学に行った先輩方からの口伝てでしか見つけにくい情報も色々あるし、留学に行きたい人、行った人同士の人脈というのはなかなかお互い役に立つことが多い。
もし必要であれば私が紹介できる人の範囲ならいくらでも紹介しよう。
奨学金や学習サポート以外にも、生活面でも助け合うことができる。

ちなみに、悔しいことにトなんとかの奨学金は、留学内容の幅の広さ、額面共にトップクラスだ。
研修や手続きはほんとに最悪だが、なんとかタテしか選択肢がない場面は多いと思う。
2020年にはトなんとかテはお金が足りなくて終了する予定らしいので、行くなら今のうちだ。

ボロクソ言っといてなんだかんだ宣伝するというツンデレみたいなムーブをしてしまったが、トビなんとかが嫌いなのは本当だ。
留学に行って圧倒的成長を!!!みたいな押し付けとハイテンションはノーサンキュー。
留学に行くべきか、そうでないか、というのは各々の価値観に任されるべきだ。
私は、ただ、留学に行くのが当たり前の社会になってほしい。
特別なものじゃなく、当たり前に日常の中にあって、出身地域や家庭を問わずどんな人でも、ふと行ってみたいと思ったら気軽に行ける、そんな存在であってほしい。
行きたい人は行って、特別なことでもなんでもなくああ、行ったんだ、と、言われ、行かない人は行かない人でそれも当たり前で、ああ、行ってないんだ、と当たり前みたいに受け入れられる、そういうものであってほしい。
行きたい人がみんな留学に行けること、すべての人が留学についての十分な情報を知った上で留学に行くべきかどうかを判断できることが大切だと思う。