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コンパクトでない空間

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理系女子は損か得か

理系女子は損か得か。ぶっちゃけてしまえば真面目にその問いの答えを考える気なんてない。答えは決まってる。損なとこもあるし得なとこもある。今回はただつらつらと深夜テンションのままに自分の考えを吐き出したいだけの話。

以前お茶の水女子大学で開催された「Seminar for women in computer」というセミナーに参加したことがある。2015年の3月あたりだろうか。その時期に開催された国際会議のために来日していたドクターから教授まで様々な立場、国籍の女性情報研究者がそれぞれの人生をお話ししてくれるというセミナーだった。当時私は一年生で、自分の専門について右も左もわかっていなかったけれど、このセミナーはロールモデルとして未だに私の姿勢に影響していると思う。

このセミナーから得たものは本当に多くて、そこで出会ったドクターの人とはその後先春のボストン旅行で再開し、進路についてアドバイスももらったりして、一記事では語り尽くせないのだけれど、印象的な言葉をひとつか紹介したいと思う。現在MITでポスドクをしているナディアが言っていた言葉だ。

「女性であることで損をすることはあるか。これはよく聞かれる質問ですが、私は個人的には損や得をしたと思ったことはありません。ただ、女性であると、それだけで目立ちます。覚えてもらいやすくなります。それを損にするか得にするかはあなた次第です」

私はこの話を聞いたとき、とても納得した。それから一年半、女子率が一割を切る数学科で学んできたけれど、その意見は変わらない。まったく、その通りだ。私は男女比が半々の高校のときから、悪く言えば浮きがち、よく言えば目立つ、目を引く学生だったけれど(目立つがいい意味だと思うかは人によるかもしれないが)、大学に入って環境の女子率が格段に下がってからはより顕著になった。

こっちは何度会ってもなかなか名前が覚えられないのに、相手には一発で覚えられる。なんなら会う前から知られている。困るを通り越してもう開き直って気にならなくなりつつある。「君が噂の小林さんか。」ですよねー。知ってた。そんな調子だ。先生にも覚えてもらえる。今のところは先生に意地悪されたことはないし、この点については損より得ばかりさせてもらっている気がする。ただし、遅刻とか課題出し忘れとかするとすぐバレる。てへ。

損だと思うこともある。他の男子学生同士が楽しそうに数学の話をしているとき、私はそこに混じれない。なんとなく壁を感じてしまう。実際に話しかけても、どことなく、「女子が来た、どうしよう」という緊張感というか、おろおろ感というか、困らせてしまっている、相手がのびのびとできていない、という雰囲気を感じる。いつの間にか、会話のキャッチボールは男子同士の中だけで飛んでいて、私は一応形上はわっか上に並んだ人の列の一部であるけれども、まるで柱のようにスルーされているような気持ちになる。だから、男子に話しかけるのは、男子が一人でいるときだけだ。私が自主ゼミを企画していたとき、他の学生も身内の自主ゼミをはじめたらしく、私が知ったときにはもうはじまっていて、私もその内容には興味あったのに、と悔しい思いをした。私だってわいわい数学の話をしたい。仲間にいれてほしい。他の女子なら混じれるのかもしれないし、私が男子でも混じれなかったのかもしれないけど、程度はともかくとして女子であることが混じりにくさに拍車をかけているという気はするのだ。

その分女子同士の結束は固い。うっかり課題を忘れたり遅刻したりしがちな私はほんとに助けてもらっている。彼女たちのおかげで生き延びられている気がする。感謝しきりだ。

幸いなところ、私は今のところ「女子は理系科目は苦手だろ」「女がやってる学問はどうせお遊び程度なんだろ」「髪を伸ばしているのがセックスアピールのようでなめているし不謹慎だ」のようなあからさまに差別的な態度を感じたことはない。もしかしたら態度に出さないだけで思っている人はいるのかもしれないけど、私が不愉快な思いをしてないならいずれにせよ問題じゃない。話に聞く限り、あるところではあるらしいし、そういう環境にいる女性は本当に苦労するだろうと思う。どちらかというと私個人は得させてもらってることの方が多い気がするけど、そういうところにいたら、損の方が多いと思うかもしれない。

「なんで女なのに数学やってるの?」と聞かれたこともない。普通聞かれるものらしい。ほんとうに環境に恵まれているとしかいいようがない。あほみたいにすぐ人を信頼してなつくのも、そういう目にあってこなかったからかもしれない。まあ、これからも合わないとは限らない。研究室と研究内容が決まり、学会とかに顔を出すようになれば、新しい人たちとの出会いもある。その人たちが女性である私を必ずしも受け入れてくれるとは限らない。受け入れてもらえなかったとして、そのとき自分がうまく対処できるのかもよくわからない。

社会的なもの、差別的なものに関しては、女子率の低い分野で女子であることって、少なくとも私が感じている範囲ではこういう感じだ。恋愛の機会については(笑い事じゃない。人生の半分はワークで残りの半分はライフで、そのライフのでかい部分を占めるのが家庭なんだから、恋愛は大問題だ)、男子にとっても女子にとってもこの男女比は様々な悩みの原因になっているだろうと思うけれど、めちゃくちゃややこしいし繊細な問題なのでここでは触れないでおく。

ちなみに、私が女子で得したと一番強く思う瞬間は、IT系資格試験の休み時間に長蛇の列を作る男子を尻目に悠々とトイレに入るときだ。