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おおらかなインド人のがんこなこだわり

インドからこんにちは。
現在IT企業にてインターンシップ中です。

インターン自体の感想もいずれまとめたいけれど、今インドの文化について感じていることを、とりあえずまとめてしまいたい。

インド人はオープンマインデット、グローバルな人たちだ。
海外にいくのも躊躇しないし、私たちのような珍しい他の人種の人に対しても、
怯えることも馬鹿にすることもなく、物珍しげに対等に話しかけに来てくれる。
欧米のように、迷ってうろうろしていたり、電車の中出となりに座ったらすぐに話しかけ来るような関西のおばちゃん精神はないけれど、
好奇心旺盛な猫が溜まり場に迷い混んだ犬に興味を示すように、遠巻きに控えめに、時折側までやってきて、こちらの話を一生懸命聞いてくれる。
遅刻しても失敗しても、絶対に怒らずに大丈夫と言ってくれる。
以前「日本では人に迷惑をかけるなと教わるが、インドでは自分も迷惑をかけているのだから他人の迷惑も許せと習う」という話をどこかで聞き齧ったけれど、なるほどと思わせられる。
国民性だけですべては語れないけれど、全体の傾向としては、そういう優しくおおらかな人たちという印象をいまのところ受ける。

しかし、そのイメージと合わない一見矛盾するような側面もある。
食文化と服装の文化だ。

スーパーでケロッグのシリアルを見つけて購入したけれど、調べてみたところ、ケロッグがこうして今のようなシェアを獲得するまでは相当な苦労があったらしい。
牛乳を殺菌するしない、冷たいまま飲む飲まないという、具体的な衛生環境と習慣の違いもあるけれど、
本質的な部分にあるのは、インド人の伝統料理に対する頑固さであるようだ。
「インドの伝統料理の朝食は健康に悪いが、ケロッグのシリアルなら簡単でバランスのとれた食事ができる」と広告を打ち出したところ、
家庭の決定権を握る主婦層に「インド料理を否定するのか」と反感を買い大失敗した、というエピソードは興味深かった。

確かに、朝御飯もお弁当もレストランも、現地の人たちは断固としてインド料理ばかり食べる。
ひとつの理由は、インド料理と他の国の料理で値段がまったく違う点にある。
私の会社が用意してくれるお弁当(二食分ぐらいのボリュームがある)は60ルピー、近所のお肉屋さんで買える鶏肉は900g195ルピー、パンは一斤ほどのサイズで30ルピーだけれど、会社向かいのピザハットのピザはMサイズ一枚550ルピーだ。
確かにこれだけ圧倒的に違うとインド料理が多くなるのもわかる。
しかし、よく考えてみると、それだけの値段の違いは大量に生産して大量に販売する流通システムが構築されているかどうかによるところが大きいだろうし、
つまりこだわりの理由と思われた値段の違い自体ももとはといえばインド人の伝統料理に対するこだわりに由来しているのだ。
他の国が経済的発展と共に他の国の食文化を取り入れていくのに対して、インドのこのこだわりようはどういうことなのだろう?
辛さも甘さもとことん濃く味をつけるインド人の感覚からすると、他の国の料理は味が薄くて水のように感じられたり、
インド料理には含まれることはほとんどない、魚や豚肉、牛肉の臭みが受け入れがたかったりするらしい。
しかし、他国の料理に受け入れがたい味の違いがあるのはどこの国にとっても同じだ。
日本がラーメンやカレーライスを産み出したように、アメリカがココナッツラーメンを産み出したように、
インドが他国の料理を辛く、あるいは甘くアレンジして受け入れることなく、伝統の料理を保存し続ける本質的な理由は何処にあるのだろう?

服装についても同じことが言える。
たとえ宗教意識の強い人でなくても、インドの伝統衣装を身に纏い、海外に行ってもそれを着続ける。

食文化も、衣装も、インドのものは宗教の影響を色濃く受けている。
必ずしも信心深い人たちだけではなくても、伝統を守り続けるのには、宗教と相互に影響しながら長年培われた価値観がひとつの理由の手がかりになるのかもしれない。