コンパクトでない空間

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自分の手でゼミを開くということ

実はこの前期の期間、自主ゼミをやっていて、先週、その最終回が終了した。
ずっと報告記事を書こう書こうと思って書けていなかったのだけれど、キリがいいのでこれを期に書いてしまおうと思う。

都数(都内数学科学生集合)の会員は入会直後一年生の頃からゼミに参加し、ゼミというものに慣れているみたいだけれど、
千葉大学の私は長らく都数の存在を知らなかったし、大学内で数学科の学生がゼミをする習慣もなく、
ゼミに自分自身参加した経験はおろか、自主ゼミをしている人も見たことがなかった。
それがいきなりゼミを開く企画側。躓くポイントも至らない点もがたくさんあったと思う。

そもそも、自主ゼミを開こうと思ったきっかけは、学科の萩原学先生に「やってみれば?」と声をかけていただいたからだ。
それまでは、自分達で勝手にゼミを開くなんて、出来るかどうか考えることはおろか、発想そのものがなかった。
当然「やってみれば?」と言われてあっさり「やるか」と思えたわけではなく、
最初は「私にはそういう企画に付き合ってくれそうな友達もあまりいないし、到底無理だ」と思っていた。
それでもやってみよう、と思ったきっかけはニューヨーク旅行だ。
意欲的に数学を学ぶ学生たちを見て感化されたと言ってもいい。
情報専攻にしろ、数学専攻にしろ、自主的に学ぶ人たちというのは決まって「授業だけでは全く足りない」と言う。
私は彼らほどできた学生でもないので、がっつり自主的に勉強して胸を張って「授業だけじゃ足りない」なんて言える立場ではないけれど、
少なくともそう思っている人たちがいる、そういう人たちについていくためには授業外の勉強が必要だ、と思うようになった。

当初心配していた、人が集まらないのではないかという心配は杞憂で、ありがたいことに学科LINEや個人的な知り合いに声をかけたら14人も集まってくれた。
苦労したのは、「教科書」と「場所」。

他の分野ではもっといろんな種類のゼミがあると思うけれど、数学でゼミと言ったらまず輪読だ。
ニューヨーク旅行で英語の数学用語がわからないと感じた私は、英語の教科書で輪読をしたいと思ったのだけれど、
どんな教科書があるのか、どう選んだらいいのか、さっぱりわからない。
難しすぎても簡単すぎてもいけないと思うし、新しいやつがいいのか、読んでて面白いやつがいいのか、
どこに行けば英語で書かれた数学の本にアクセスできるのか、なにからなにまで手探りだった。
先生方にアドバイスをいただきながら、「学部三年生に適切なレベルの英語の数学書」ということでなんとかかんとか候補を4つに絞り、参加者に希望を聞いてみたところ、
みんなが選んだのはハッチャーのAlgebraic Topologyだった。
アメリカで一番読まれているトポロジーの教科書、らしい。

それから、場所については、最終的には参加していただけることになった院生の方が、担当の先生の名義をお借りして理学部棟の一室を貸してくださった。
図書館のグループ学習室は毎週予約し直さなければならず、確実にとれる保証がないし、
そもそも今回のゼミは個人的な知り合いの学外からの参加者もいたので、使えない。
理学部全体の管轄の教室は勝手に入り込んで使っていても誰も文句を言わないわりに、
しっかり手続きを踏んで部屋をとろうと思うと先生を介してでないと予約がとれないし、
五限後はセキュリティが厳しくなって、入り口に鍵がかかって理学部の院生でないと入れなくなるし、先生も同席しないと教室の予約をとれない。
最近はラウンジを多目的で使えるように公開してくれているようで、今後はそこでゼミなどできるようだけれど、
私たちがゼミをはじめたときはそれもまだなかったので、院生の方が参加してくれなければ場所を取れなかったと思う。

こうしていろんな方の支えを得て教科書と場所が決まり、ハッチャーゼミはスタートした。
メンバーの中に一人、ホモロジーが大好きで自分でしっかり勉強している詳しい人がいたので(同級生のはずなのにとてもそうは思えなかった。本当にすごい)、
彼がどこをやったらいいだとかも助言してくれたし、輪読の発表も半分は彼がやってくれた。
四月の第三週からはじめ、途中一度休みをはさんだので、全12回。
2.1章を読み終え、章末の演習問題をいくつか解いて、前期ハッチャーゼミは終了した。

具体的な内容については、いずれまた書くかもしれないけれど、今回は数学的な内容ではなくゼミの企画に焦点を当てたいので割愛する。
こうして振り返ってみて思うのは、本当に多くの人に支えられたなということだ。
提案し、相談に乗ってくれた萩原先生。教科書の選び方に助言をしてくれた先生方に、部屋の名義を貸してくださった先生。
部屋の確保をしてくれた院生の方に、内容をよくわかってない幹事に代わって進行を支えてくれたメンバー。
当然、集まってくれた14人がいなかったら、一人でゼミを開くこともできなかった。
内容も、基礎的でためになるものを自分なりになんとか理解できたと思うし、
なにより、前例がない中ゼミを企画し、最後までやりきったのは達成感がある。

実は、人数が多すぎたので、14人のうちの半分はハッチャーゼミではなく別のゼミを開いていたのだけれど、もうひとつのゼミの方も含めて、参加してくれた彼らはこのゼミに何を思っただろうか。
数学的な内容でもいいし、人間的な成長でもいい。達成できたことでもいいし、達成できなかったことへの反省でもいい。
なにかしら、得たものがあると嬉しいなと思う。

最後に、初回、教科書を決める回で使った資料をおいておく。
決して完璧な幹事でもないし資料でもなかったと思うけれど、
候補になっていた他の教科書も載っているので、ゼミの企画に興味のある人は参考にしてほしい。

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